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コラム

子どもの手の甲に異所性蒙古斑が現れたら

「えっ、うちの子の手の甲に青あざがある!」

こういう事態に直面されたお子さんや赤ちゃんがいるご家庭もあるかもしれません。

赤ちゃんのお尻にある青っぽいあざ、いわゆる「蒙古斑」と呼ばれ、ほとんどの日本人の赤ちゃんに見られる、ごく普通のものです。

ですが、同じような青あざが手の甲や顔に現れるのが「異所性蒙古斑」なのです。

「え、大丈夫なの?」「治療は必要?」

この記事では、そんな疑問をお持ちの方向けに異所性蒙古斑について解説します。

より詳しくは皮ふと子どものあざクリニック茗荷谷までご相談ください。

異所性蒙古斑とは

蒙古斑とは、生まれつき臀部にある青あざのことですが、手の甲などの臀部以外に見られる青あざは「異所性蒙古斑」と呼ばれ、子どもによく見られます。

異所性蒙古斑は、子どもが10〜11歳になる頃までに消失することが多いです。

異所性蒙古斑は必ずしも治療をする必要はありませんが、手の甲などの衣服で隠し切れない部分に残ると精神的苦痛を伴うこともあります。

異所性蒙古斑は成長期の子どもの心に大きな影響を及ぼす可能性があり、将来的ないじめの原因にもなりかねません。

自然消滅が期待できない持続性のある異所性蒙古斑は、QプラスR(Qスイッチ付きルビーレーザー)を照射することで薄くすることが可能です。

また、成人に比べ子どもの方が皮膚は薄いため、治療が早ければ早いほど効果的と言われています。

子どものコンプレックスにならないためにも、気になるところがあれば早めに受診、治療することをおすすめします。

異所性蒙古斑は手の甲にも現れる

異所性蒙古斑は、通常の蒙古斑が見られる臀部や背中以外の部位に出現します。

特に注目すべき部位として、手の甲があります。

アジア系の子どもに比較的多く見られる傾向があります。

異所性蒙古斑の原因

異所性蒙古斑や蒙古斑の原因は、真皮の部分にメラニン色素を産出する色素細胞(メラノサイト)が残っているためと言われています。

通常、生まれてくるまでには色素細胞(メラノサイト)は消えますが、何らかの原因で残った場合は青あざとして残ります。

また、蒙古斑の発生率は人種によっても異なり、アジア系人種ではほぼ100%見られるのが特徴です。

詳しくは、こちらをご覧ください。

異所性蒙古斑と太田母斑の相違点について

異所性蒙古斑と太田母斑は同じ青あざと呼ばれるものです。

上述したように、異所性蒙古斑は臀部以外に現れる青あざですが、目の周囲など顔面に現れる青あざは太田母斑と呼ばれます。

太田母斑はその中でも顔面の片側のみに現れることがほとんどです。

また、異所性蒙古斑とは異なり、太田母斑は思春期以降にも発生することが特徴です。

異所性蒙古斑も太田母斑も健康を損なうものではないため、必ずしも治療をする必要はありませんが、太田母斑は異所性蒙古斑のように自然に消失することがありません。

異所性蒙古斑の治療方法や治療期間

異所性蒙古斑は、「QプラスR」というQスイッチ付きルビーレーザーで治療することにより改善することが可能です。

QプラスRはイタリアに本社を構える世界的なレーザー企業であるQuanta社製のレーザーであり、日本でも多くのクリニックで導入されています。

また、実際、レーザーを使用した場合と使用しなかった場合とで使用したほうがよいという論文もあります。

これは、2013年から2018年の釜山国立大学病院で 61 人の患者の70個の異所性蒙古斑について1064 nm Q スイッチ Nd:YAG レーザーで治療したグループと治療せずに観察されましたグループにわけて観察されました。

Jun-Oh Shin“High-fluence 1064nm Q-switched Nd:YAG laser treatment for ectopic Mongolian spot” (皮膚科治療ジャーナル 2023年第34巻第1号)

Q-switched neodymium-yttrium aluminum-garnet (Q-switched Nd:YAG) laser has been reported as an effective treatment for nevus of Ota and acquired bilateral nevus of Ota-like macules (ABNOM). Data on ectopic Mongolian spots have rarely been reported.

The present study was performed to investigate the treatment efficacy of a high-fluence 1064 nm Q-switched Nd:YAG laser without tissue whitening in ectopic Mongolian spots.

We included 61 patients with ectopic Mongolian spots, and 70 lesions were examined.
Thirty-three lesions were treated with a high-fluence 1064 nm Q-switched Nd:YAG laser, and 38 lesions were observed without treatment. The results were assessed using a 5-quantile grading scale and melanin index using a Mexameter®.

Mean follow-up duration was 14.1 ± 6.8 months for the treatment group and 17.8 ± 10.0 months for the observation group. Mean 5-quintile grading scale at final follow-up was statistically different (p < 0.001) between the two groups (treatment: 2.85 ± 1.00, observation: 0.49 ± 0.73). There was a significant difference (p < 0.001) in the Δ melanin index (initial melanin index – final melanin index) between the observation (7.1 ± 62.7) and treatment (156.7 ± 78.4) groups.

High-fluence Q-switched Nd:YAG laser without tissue whitening showed good results and was well-tolerated in treating ectopic Mongolian spots.

一回のレーザー治療でも効果を得られますが、複数回照射することでより効果を発揮します。

レーザー治療は輪ゴムで弾かれたような痛みを伴うことから、局所麻酔や全身麻酔を行い治療します。

治療期間や治療回数については個人差がありますが、およそ1. 5年〜2年程度で治療が終了する場合が多いです。

レーザー治療については3〜6か月に一度行うことになりますが、定期的なレーザー照射により異所性蒙古斑をほぼ完全に消すことができます。

異所性蒙古斑は治療開始年齢が早ければ早いほど治療効果が得られやすいという傾向があり、また、治療期間を空けた方がより効果的な結果が出るという報告もあります。

Hitomi Eto, You Kobayashi, Rerei Nakayama, Takashi Sato, Aki Ihara, Akiko Kai, Mine Ozaki, Akihiko Takushima, Kiyonori Harii“異所性蒙古斑の治療におけるレーザー照射回数に影響を及ぼす因子の研究”(日本レーザー医学会雑誌2016 Volume 37 Issue 1 Pages 30-35)

異所性蒙古斑は自然に薄くなることが多いため、レーザー治療を行う場合は、治療に伴う合併症を最小限に抑え、患者の精神的負担を軽減することが重要です。そのため、レーザー治療の回数は少ない方が望ましいです。望ましい治療効果を達成するための治療回数に影響を与える要因を調べるために、Qスイッチルビーレーザーで治療した患者を分析しました。その結果、レーザー治療回数に影響を与える重要な要因は、年齢、レーザー照射間隔、および総治療時間でした。異所性蒙古斑に対するレーザー治療は、幼少期に開始し、長い間隔で繰り返すことが推奨されます。

異所性蒙古斑の治療によるリスクや副作用

レーザー治療により異所性蒙古斑を薄くすることは可能ですが、リスクや副作用には以下のようなものが挙げられます。

このリスクや副作用については、レーザーを低出力にして照射し、日焼け対策を徹底することで軽減させることは可能です。

色素沈着

色素沈着とは、皮膚の色が黒くなることです。

レーザー治療により、肌にダメージが与えられたことで、皮膚を守るために色素細胞(メラノサイト)からメラニンが生成されることで生じます。

色素脱失

色素脱失とは、皮膚の色が白く抜ける疾患のことで、皮膚にまだらな白い斑状が現れます。

皮膚にある色素細胞(メラノサイト)が何らかの原因で減少することで生じます。

発赤

発赤とは、皮膚が赤くなる現象です。

レーザー治療により、皮膚が炎症を起こしたことで生じます。

内出血

内出血とは、体内で出血が起きることを言います。

レーザー治療により血管を破壊したことで、内出血を起こす場合があります。

異所性蒙古斑の治療におけるリスクや副作用については、カウンセリング時にも説明させていただきます。

異所性蒙古斑の治療費用

異所性蒙古斑は保険が適用される治療となっており、費用については青あざの面積により異なります

自治体によっては「子ども医療費助成制度」を利用できる場合があります。

子ども医療費助成制度とは、子どもにかかる治療費の一部または全額を自治体が助成する制度です。

例えば、東京都23区在住の場合、高校生までは自己負担なく治療費が無料となります。

ただし、制度の利用には自治体より交付された医療証が必要となりますのでご注意ください。

また、制度が適用される年齢などの諸条件については、各自治体により異なります。

詳細についてはお住まいの地域の自治体ホームページで確認しましょう。

子どもの異所性蒙古斑についてお悩みがある際は、ぜひお気軽に皮ふと子どものあざクリニック茗荷谷にご相談ください。

記事監修者プロフィール

院長 杉本 貴子

院長杉本 貴子

Sugimoto Atsuko

経歴
  • お茶の水女子大学附属高等学校 卒業
  • 獨協医科大学 卒業
  • 国立国際医療研究センター 初期研修
  • 日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科 助教
  • 皮ふと子どものあざクリニック茗荷谷 院長

【関連病院】

  • 東京美容医療クリニック
  • 日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科 非常勤講師
資格
  • 医学博士
  • 日本形成外科学会 専門医
  • 日本形成外科学会レーザー 分野指導医
  • 日本抗加齢医学会 学会認定専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • GSK社 重度腋窩多汗症ボトックス 認定医
  • アラガン社 ボトックス・ヒアルロン酸 認定医
  • クールスカルプティング 認定医
こどものアザは保険適用で治療できます。

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※1週間以内に風邪症状のあった方は受診をお控えください。
当院は新生児の方も受診しますため、ご理解ご協力をいただけますと幸いです。

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