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神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)とは?診断基準や1型と2型の違い・発症する確率などを解説

神経線維腫症1型は、厚生労働省が指定した難病の1つです。そんな神経線維腫症1型ですが、「発症する確率や患者数が知りたい」「どのような症状があるのだろう」と思う方は多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、神経線維腫症1型とはどのような疾患か、診断基準や1型と2型の違い・発症する確率などを解説します。また、初発年齢や治療法も併せて紹介します。

この記事を読めば、神経線維腫症1型を詳しく理解できるので、疾患について詳しく知りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

目次

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)とは

神経線維腫症1型(NF1)は「レックリングハウゼン病」「NF1」とも呼ばれ、皮膚や神経、骨に影響を及ぼす遺伝性疾患です。薄茶色の皮膚のシミや、良性腫瘍が現れるのが特徴です。遺伝子の変化変異によって発症する方が多く、子ども時代に症状が現れます。

皮膚の見た目の変化だけで済む場合もあれば、骨や学習面での問題を伴う場合もあり、程度は一人ひとり異なります。

神経線維腫症1型は進行性の疾患のため、放置すると症状が悪化する可能性があることから、早めに対策をして治療をすることが重要です。

近年では、神経線維腫症1型に特化した治療法やサポート体制も充実してきており、多くの方が日常生活を問題なく送れるようになっています。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)を発症する確率

神経線維腫症1型は、約3,000人に1人という頻度で発症します。遺伝性疾患の中でも、比較的多くみられる疾患です。半数以上の方は親からの遺伝により発症しますが、残りの約半数は遺伝子の突然変異によるもので、家族の既往歴がない場合でも発症する可能性があります。

遺伝子の変異は生まれつきのため、小児期から症状が現れることがほとんどです。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の患者数

世界全体では約200万人、日本国内では約4万人が神経線維腫症1型を抱えていると推定されています。日本では「指定難病」に分類されており、条件を満たす場合には公的な医療費助成を受けられる疾患です、

近年では、病気に関する認知度が高まっており、診断技術の進歩によって、より早期に発見されるケースも増えています。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の原因

神経線維腫症1型は、17番染色体にある「NF1遺伝子」が変異することによって引き起こされます。NF1遺伝子は「ニューロフィブロミン」というタンパク質を作り出す役割を担っています。

ニューロフィブロミンは、細胞の成長を抑える働きがあり、異常があると細胞の増殖が制御されなくなります。その結果、皮膚や神経、骨に症状が現れるのが特徴です。

遺伝性の神経線維腫症1型は、患者の親の片方が同じ病気を持っている場合が多く、50%の確率で子どもに遺伝します。一方、家族の既往歴がなくても、遺伝子の突然変異によって発症することがあります。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)と2型の違い

神経線維腫症には、1型と2型があります。それぞれ、神経線維腫症という名前が付いていますが、発症の原因や症状が大きく異なります。

1型と2型の違いは、以下のとおりです。

1型の特徴 2型の特徴
・17番染色体の変異により発症

・主に皮膚に薄茶色のシミが現れる

・皮膚の腫瘍が発生する

・発症率は約3,000人に1人と多め

・骨の変形や学習障害が見られることもある

・22番染色体の変異により発症

・聴力に関わる神経に腫瘍(聴神経腫瘍)が発生する

・脳や脊髄に腫瘍ができることが多い

・発症率は約25,000人に1人と少なめ

・皮膚症状はほとんど見られない

神経線維腫症2型も遺伝子の変異が原因ですが、1型は皮膚症状が目立つ一方、2型は聴覚や神経系の症状が中心に現れます。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の症状

神経線維腫症1型の症状は、一人ひとり異なります。以下の症状は、出生時から現れる場合もあれば、年齢とともに進行することもあります。

  • カフェオレ班
  • 大型の褐色斑・びまん性神経線維腫
  • 虹彩小結節
  • 視神経膠腫
  • 神経繊維種(コブ)
  • 学習障害・多動性障害
  • 骨の変形・欠損

それぞれ詳しくみていきましょう。

カフェオレ斑

引用元:MSDマニュアル家庭版

カフェオレ斑は薄茶色のシミで、背中やお腹、四肢など、体のさまざまな部位にみられます。カフェオレ斑は出生時または幼児期に現れ、6個以上が確認されると神経線維腫症1型の診断が疑われるのが一般的です。

カフェオレ斑は、ほとんどの方にみられる症状であることから、診断基準の1つとなっています。出生児または幼児期・児童期には5mm以上の大きさ、思春期以降は15mm以上の大きさになります。

シミ自体は、健康への直接的な影響を与えませんが、他の症状との組み合わせにより診断が行われるのが一般的です。

大型の褐色斑・びまん性神経線維腫

引用元:厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「診断ガイドライン」

神経線維腫症1型では、カフェオレ斑より大きな褐色斑やびまん性神経線維腫がみられることもあります。びまん性神経線維腫は皮膚の下に広がる腫瘍で、触れると柔らかく、皮膚表面が盛り上がる形で現れます。

症状は顔や四肢に現れ、進行すると痛みや機能障害を伴うのが一般的です。大きさや位置により生活に支障をきたす場合があるため、医療機関での評価と治療が必要となっています。

虹彩小結節

虹彩小結節は、目の虹彩に現れる小さな粒状の結節で、検査によって診断することが可能です。無症状のことが多く、視力に影響することはありませんが、診断する際の重要な指標となっています。

年齢とともに発生頻度が高まるため、眼科検診を定期的に受けることが推奨されます。

視神経膠腫

視神経膠腫は視神経に発生する腫瘍で、小児期に発症するのが特徴です。視力低下や眼球の動きの異常を引き起こす可能性がありますが、進行は比較的遅い傾向にあります。

視力や目の動きに異常が見られた場合は、眼科や神経科での迅速な診断と治療が必要となります。

神経線維腫(コブ)

引用元:厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「診断ガイドライン」

神経線維腫は、皮膚や皮下に形成される柔らかい腫瘍で、一人ひとり数や大きさが異なります。コブの数は数個〜数千個に及ぶこともあるため、見た目に影響を及ぼす可能性が高いです。

皮膚だけではなく、神経の中に発症することもあります。神経の中にできたコブは痛みを伴うことが多く、症状に応じた治療が求められます。

学習障害・多動性障害

神経線維腫症1型の半数近くの方は、学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)を伴う方もいます。学習障害は知的の発達に遅れはないけれども、聞く・話す・読む・書く・計算又は推論する能力の中で、特定の内容の習得に困難を示す状態です。

一方、注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意・多動性・衝動性が特徴の疾患です。7歳以前に現れることが多く、特別支援教育や心理療法を受けることで、社会に適応する力を高められます。

骨の変形・欠損

神経線維腫症1型は、骨の変形や欠損がみられる方もいます。四肢骨の変形や骨折、脊椎や胸郭の変形、頭蓋骨や顔面骨の欠損などが報告されています。

骨の変形や欠損は、歩行や日常生活に影響を及ぼす可能性があるため、専門医による早期治療が不可欠です。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の診断基準

神経線維腫症1型は、遺伝子検査もしくは症状をもとに診断されます。ここからは、診断基準について詳しく解説します。

遺伝子検査

神経線維腫症1型は、遺伝子変異の疾患のため、遺伝子検査で診断することが可能です。以下のケースでは、遺伝子検査が必要とされる傾向にあります。

  • 症状が軽度で診断基準を満たさない場合
  • 症状が現れる前だが、親が神経線維腫症1型の既往歴がある場合
  • 症状が類似しているがNF1か確信が持てない場合
  • 他の疾患と区別が難しい場合

血液や唾液などのサンプルを用いて、NF1遺伝子に異常があるかを確認し、17番染色体に変異が生じていると診断が確定します。

症状による診断

神経線維腫症1型の診断は、臨床症状を観察して行われるのが一般的です。身体に現れる特定の症状や兆候を確認することで、病気の可能性を判断します。

診断基準は、以下のとおりです。

  • 6個以上のカフェオレ斑
  • 2個以上のコブ
  • 脇の下や足の付け根の斑点
  • 虹彩にみられる粒状の結節
  • 視力の低下や眼球の揺れ
  • 骨の変形・生まれつきの欠損
  • 家族内に同疾患を患っている方がいるか

上記7項目のうち、2項目以上該当した場合に神経線維腫症1型の診断が確定します。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の初発年齢

神経線維腫症1型は、出生時または幼少期に症状が現れ始めることが多い病気です。代表的なカフェオレ斑は、出生時から確認されるケースが多く、3歳頃までにはほぼすべての方にみられます。

成人まで明確な症状が現れず、診断が遅れるケースもあり、初発年齢には個人差があるのが特徴です。気になる症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の治療法

神経線維腫症1型の治療法は、症状の緩和と合併症の予防が中心です。根治する治療法がまだ確立されていないため、外科的切除やレーザー治療が選択される傾向にあります。

中でも、神経繊維種が重要な臓器を圧迫している場合には、外科手術が必要となるのが一般的です。重症の場合は皮膚科のほか、小児科・神経内科・眼科・耳鼻科・整形外科・脳神経外科・形成外科などの、複数診療科の医師がチームを組んでケアにあたることがあります。

また、学習障害や多動性障害に対しては、心理療法や教育支援が行われます。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の寿命

平均寿命は、一般的な平均寿命より10〜15年程度短いとされています。ただし、適切な診療と合併症の管理によって、健康的な生活を長く続けることが可能です。そのため、定期的な通院が必要となります。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)に関するよくある質問

最後に、神経線維腫症1型に関するよくある質問を紹介します。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)は悪性腫瘍ですか?

一部の神経線維腫が、悪性になる可能性があります。悪性の腫瘍になるリスクは約10%とされていますが、腫瘍の急速な増大や痛み、発赤などがある場合には、医師に相談することが重要です。

また、定期的に診察を受けて、悪性化の兆候がないか確認することが大切です。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の顔つきはどのような感じですか?

神経線維腫症1型には、特有の顔つきはみられません。ただし、顔に神経線維腫が発生することで、外見の変化が生じる可能性があります。外科手術などで改善できる場合もあるため、専門医と相談することが推奨されます。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)は通院が必要ですか?

神経線維腫症1型は慢性的な疾患のため、定期的な通院が必須です。小児期から成人期にかけて症状が進行するため、腫瘍の進行状況や骨の異常・学習障害の有無を継続的に評価する必要があります。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)の治療薬はありますか?

完治させる治療薬はありませんが、一部の症状を管理するための薬物治療が行われています。現在も研究が進められているため、今後より効果的な薬が開発される可能性もあります。

神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)は赤ちゃんに遺伝しますか?

親が神経線維腫症1型を患っている場合は、50%の確率で子どもに遺伝することがわかっています。赤ちゃんへの遺伝が心配な方は、出生後に早期診断を受けることで、症状の発見と治療を迅速に行えるでしょう。

まとめ

この記事では、神経線維腫症1型の原因や症状などを解説しました。

発症確率は約3,000人に1人で、日本国内にも約4万人の患者がいるとされています。原因は17番染色体にあるNF1遺伝子の変異で、幼少期から思春期に症状が現れるのが一般的です。

代表的な症状として、カフェオレ斑や雀卵斑様色素斑、神経線維腫、視神経膠腫などが挙げられます。現段階では、完治させる治療法が解明されていないため、症状の緩和や合併症予防を目的とした治療が中心です。進行性の疾患のため、早期の診断と治療がとても重要です。

この記事で紹介した内容を参考に、経線維腫症1型の早期診断や家族のサポートに役立てください。

記事監修者プロフィール

院長 杉本 貴子

院長杉本 貴子

Sugimoto Atsuko

経歴
  • お茶の水女子大学附属高等学校 卒業
  • 獨協医科大学 卒業
  • 国立国際医療研究センター 初期研修
  • 日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科 助教
  • 皮ふと子どものあざクリニック茗荷谷 院長

【関連病院】

  • 東京美容医療クリニック
  • 日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科 非常勤講師
資格
  • 医学博士
  • 日本形成外科学会 専門医
  • 日本形成外科学会レーザー 分野指導医
  • 日本抗加齢医学会 学会認定専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • GSK社 重度腋窩多汗症ボトックス 認定医
  • アラガン社 ボトックス・ヒアルロン酸 認定医
  • クールスカルプティング 認定医
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